エアアジアとマレーシア航空が協力し合う協定が調印された

はじめに

エアアジア X の大阪就航の予約購入が8月11日から始まったことで、格安航空エアアジアに対する日本人の興味が益々高まっていることでしょう。当ブログはこの数ヶ月徐々に読者が増えてきていました、そこへ8月第2週になって読者が急増したことからも、この推測が間違っていないことがわかります。

さて日本ではニュースがほとんど伝えられなかったまたは小さく伝えられたのでほとんどの日本人は気がつかなかった、非常に重要なエアジアニュースがこの8月第2週に起こりました。それが今回のブログ記事のテーマです。

ちょうど日本航空が日本のナショナルフラグキャリアであるように、マレーシア航空がマレーシアのナショナルフラグキャリアであることは皆さんもご存知でしょう。そのマレーシア航空はこの10数年数回に渡って巨額な赤字に苦しんできました。2005年末に外部から招聘したCEOの大改革によって一度は生き返ったのですが、今年に入って再度赤字に転落しています。

この7,8年エアアジアとマレーシア航空は国内外の両分野で熾烈な競争をしてきました。そのことは、マレーシアにおける航空料金が下がり続けてきた要因の大きな1つです。そしてエアアジアは今や株式市場でも旅客数でもマレーシア航空を凌駕しており、収支面でも黒字の決算期が多いのです。流れは完全に AirAsia にあります。

マレーシア政府が暗黙に認めるエアアジアによるマレーシア航空救済の意味合いをこめて、エアアジアの持ち株会社とマレーシア航空の持ち株会社(政府翼下の投資機関)が相互に株式の持ち合いをするとの合意に達し、その調印式が8月9日にクアラルンプールで行われました。こんなことは、現在のエアアジアが生まれた2002年当時誰が予測したことでしょう。それほど驚くべきできごとです。

両航空会社の協力協定の内容は一部を除いて直ちに発効しませんが、近い将来マレーシアの航空業界に大きな再形成をもたらすことになるはずです。協力によってマレーシア国内便における格安競争はかなり穏便化するのではないだろうか、という心配も出ています。エアアジアの本来のビジネス方向性にマレーシア航空の備える通常航空会社のあり方が障害になるのではという、憶測もあるそうです。一方エアアジア Xは東南アジア外への国際路線の多様化がやりやすくなるという見方もあります。東南アジア路線ではエアアジアはマレーシア航空をもう問題にしていないくらい圧倒していますから、東南アジア路線では東南アジア各国の航空会社との競争が引き続きます。


【エアアジアとマレーシア航空が協力協定に調印、 互いに株式を持ち合うことになる】

Intraasia 注:以下の内容を理解していただくために、まず固有名詞の短い解説を加えておきます。
Khazanah Nasional Bhd : 政府翼下の投資機関、なお形態は会社組織です。 Khazanah Nasional は数ある国営、準国営企業に投資・出資しており、そういう企業の経営に対して政府の影響力を及ぼしたり、コントロールしている。
Tun Air Sdn Bhd : AirAsia が発足した時からのエアアジアグループの持ち株会社。創業者であるグループCEOと副CEOらがTun Air の主たる株主。
Firefly :マレーシア航空が設立した低コスト航空会社(LCC)。 路線はマレーシア国内及びタイとインドネシアへの路線、ただし国際路線はごく少ない。

以下はマレーシアの新聞に載った複数の記事を抜粋して翻訳したものです。

マレーシア航空とエアアジアは画期的な交渉において調印をしました。これによってマレーシアの航空業界を再形成することになります。両航空会社はこれまでのライバル競争を減らす一方、航空機購入、整備、地上サービス、貨物サービス、飲食提供、乗務員らの訓練の面で費用を削減することを計画しています。

この交渉決着の結果、エアアジアCEOと副CEOがマレーシア航空の取締役に加わります。両社が持ち株の一部を交換し合うことで、Tun Air Sdn Bhdはマレーシア航空の株式の20.5%を取得します。 (それでも)マレーシア航空の最大株主(交換前は 69%を保有)であるKhazanah Nasional Bhd  は49%を保有することで今後も依然として最大株主のままです。一方Khazanah Nasional Bhd はAirAsiaの株式の10%を取得します。 
この株式持合い交渉を先週末の株価で概算するとRM 20億になります、 マレーシア航空株価 RM 1.60、 AirAsia 株価 RM 3.95.

「両航空会社は距離感を持ってそれぞれ別の会社であり続けます、取締役会も別個です。両社はそれぞれの核となる競争力に焦点を定めていきます。この決着は強力な協力です。」 「マレーシア航空の救済ではありません」 とKhazanah Nasional Bhd の社長は語る。

なおTun Air Sdn BhdとKhazanah Nasional Bhdはそれぞれ持ち合う相手の株式を30ヶ月間は売りに出さないとの合意があると、数日後明らかにされました。

今回の交渉に関して、消費者とアナリスト・識者からは賛否が混じった反応が出ています。
両社の株主にはそれぞれ新株引受権証券が無料で発行されます。エアアジア株主は10株に付き1株のマレーシア航空新株引受権証券、マレーシア航空株主は30株に付き1株のエアアジア新株引受権証券です。

両社は包括的な協力枠組みに調印したのでこれは正式契約の成立となりますが、時間枠は設定されていません。正式契約の期間は5年であり、その後5年間延長する協定更新のオプションが定めてあります。マレーシア航空は社長が辞任し取締役 7人が取締役会から去りました。そしてマレーシア航空取締役会にはエアアジアグループの2人に加えて新たに外部から4人が(非執行役員に)就任しました。

この協力劇の全体的コンセプトはマレーシア航空を救済することであり、その航空ビジネスを真のプレミアム航空会社にするべく再編成することです、つまりシンガポール航空や Emirates 航空のようにです。ターボジェット機を使用しているFirefly は東南アジア内を運行する通常航空会社になるでしょう。エアアジアとエアアジア X は短距離、中距離、長距離路線で引き続き低コスト航空であり続けます。

今回の交渉で得するのはマレーシア航空だと観る見方が多い中で、より大きな利益者はエアアジアだという見方もあります。協力関係によって、エアアジアはもっと利益の多い路線に就航できる、Firefly が通常航空に転化することで国内の低コスト航空面で競争がなくなるなどの利点が見込めます。エアアジアCEOは語る、「これは成長なのであり、合併ではありません。マレーシアの一般大衆が心配する理由は何もありません」

この協力協定は、独占防止の分析調査が十分に行われた後で初めて発効します。両社はこの点をクアラルンプール証券取引所に対して別々に通知しました。マレーシアで来年1月から施行される、競争法では競争に反する合意を禁止し、独占的な企業の不正行為を禁じています。

この協力協定における構想では、マレーシア航空は十分なるサービスを提供するプレミアム航空会社になることに焦点を合わせる、エアアジアは東南アジアの低コスト航空会社であり続け、エアアジア Xは中長距離の低コスト航空会社であり続けるということです、これは独占禁止法による適正な調査を済ませることが条件です。 エアアジアCEOは語る、「エアアジアはこれまで常に航空運賃を下げてきたし今後も航空運賃を下げ続けていきます。毎年エアアジアの運賃は下がっています。我々は競争力を持ち続けなければならない、桁外れに高いような価格をつけることはありません。」 


東南アジア諸国連合(アセアン)空の自由化協定の発効は2015年です。そこで域内の航空会社は積極的に成長を進めており、それぞれのLCCを設立しています。エアアジアCEOは言う、「我々が注文した航空機は全て必要であり、注文を減らすことはない。成長が鍵です、とりわけアセアン空の自由化なのです。」

マレーシアの Maybank投資銀行はその報告書で書いている: 厳しい現実としてFirefly の運行が停止されるかもしれない、なぜならFirefly はエアアジアの市場を侵食しており、とりわけ半島部とボルネオ島部間のフライトでエアアジアの利益を奪っているからです。 マレーシア航空グループ(MAS, Firefly, MasWing) とエアアジアグループ(AirAsia, Thailand AirAsia, Indonesia AirAsia, AirAsia X) をあわせた運行能力の70%ぐらいが重なった路線で展開されている。
そこでMaybank投資銀行は推測する、「両航空会社は市場の需要にあった収容能力に再編成することで、年間RM 10億ぐらいもの金をコスト削減できるであろう。」

マレーシア航空はCEO(社長)が辞任して不在となりましたが、新CEOの任命の時間枠は設定されていません。

エアアジアX は当初、今年マレーシア株式市場で株式を公開し上場する計画でしたが、その将来成長に見通しがはっきりしないので上場計画を遅らせることにしました。国際長距離便であるエアアジアXはその路線開通において(政府当局による)路線割り当てに多いに依存しているからです。

AirAsia Xは乗客数の多い路線、例えばシドニー -クアラルンプール路線、の開通を目指して執拗にロビー活動をしてきました、しかし成果はありませんでした。政府の路線の割り当て政策がないことで、投資家は AirAsia Xへ投資する明確な必要性を見出せないだろうという不安があります。 

AirAsia グループとマレーシア航空の間での協力協定が調印されたことによって、マレーシア航空は十分あるサービスを提供するプレミアム航空、 AirAsia XはLCCターミナル発着の中長距離航空という構想になります。「もう一つの障害が完全に取り除かれたことで、投資家は AirAsia Xのビジョンをはっきりと知ることになった、これが株式上場を非常に助けることになります。」と AirAsia グループCEOは語る。彼はさらに言う、「Khazanah Nasional Bhd はAirAsia X の株式の10%を取得することを計画しており、これは早期に行われることでしょう。」
以上


ここに紹介したようなマレーシアマスコミのニュースをいくつか読むと、マレーシア航空に近い将来間違いなく変化が生まれであろうことがわかります。どうやらマレーシア航空はプレミアム航空化する、つまり高級ブランド航空を目指すことになるようですね。
そこで格安航空には乗るつもりはない方にも、今回の両社の提携協定はなんらかの影響を及ぼすことになります。マレーシア航空はエアアジア/エアアジア X にシェアを奪われないようにと時々低運賃キャンペーンを打ってきました、それは乗客数を増やすことに貢献しても、財政的にはあまり貢献しなかったようです。マレーシア航空はプレミアム航空化すれば、低運賃キャンペーンはなくなりますね。

新規路線開拓がいささか行き詰っているAirAsia Xは政府の後押しが得られれば、新路線開拓が容易になることでしょう。そうなれば、クアラルンプールLCCターミナルをハブとした、格安国際路線網が充実することになります。

両社提携の結果は数年たたないとはっきり見えてこないかもしれません。いずれにしろ航空機利用者としての私たちは、 AirAsia グループの格安な料金の路線がさらに拡大していき、同時に現行の格安さが今後も続くことを期待しましょう。



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マレーシア情報を1996年以来発信し続けている Intraasia のエアアジア専門ブログへようこそ! (2010年10月ブログ開始)
AirAsia が初飛行を開始した2002年以来、Intraasia はAirAsiaを観察し利用しています。

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